達也が次に意識を取り戻したとき、彼はまたもオフィスのデスクの椅子に座っていた。
周囲のキーボード音がざわめきだす。窓の外は、やはり強烈な日差し。
そして、時刻は再び【時刻:12:00】。
達也は、驚きと絶望に、全身の力が抜けるのを感じた。
「また、戻された……!」
彼の耳に、太い大きな声が聞こえる。
「おい」
達也は上体をあげ、目の前にいる同僚の大山を見た。大山は、無垢な顔をしている。
「疲れているのか」
達也は、この繰り返される時間のループに囚われたことを悟った。時計は、彼が秘密に近づきすぎると、その都度彼を「最初の原点」へと強制送還しているのだ。
だが、達也には前回とは違うものが一つだけあった。
それは、意識が途切れる寸前に聞いた、店主の叫び。
「蛇口の、水の流れを、見よ……!」
達也は、三度目の正直で、骨董屋の水のトリックに、この時間ループの脱出の鍵が隠されているのではないか、と考えた。彼は、このループを脱出し、未来へと進むために、今度こそ、最初のアプローチから変える必要があった。
達也は、疲れ切ったふりをして答えた。
「ああ、そうだな、眠くて仕事にならない。大山、コーヒーでも飲みに行こう」