エピローグ
達也と大山が骨董屋を出て、夏の喧騒が包む路地を歩き始めたとき、達也はふと立ち止まり、振り返った。
緑色の屋根の小さな骨董店「時の音」は、強烈な日差しの中、まるで何もなかったかのように静かに佇んでいる。
「どうした?」大山が尋ねた。
達也は首を横に振った。「いや、なんでもない。ただ、ちゃんと時間が動いているか、確認したかっただけだ」
「そりゃ動くだろ。お前、疲れてるんじゃないか? 休憩ばかりしてられないぞ」大山は笑った。
どうやら、大山は自然とあの時の記憶をなくしたようだ。
自分だけが二つの時間の記憶を持つ、時間の守り人となったのだ。
達也の視界の隅に、ショーウインドウの水のトリックが映った。