時の音 -3

毎日、パソコンばかりやっていると、頭がぼーっとしてくる。
そのうち画面もぼやっとしてきた。
ゆらゆらと画面が揺らめいている。
なかなか揺れが止まらない。
気がつくと達也の体も揺れているようである。

地震である。
上体を挙げ、辺りを見回す。
ざわざわと周りの同僚が動きだした。
避難のため、ビルの近くの広場に集合する。
大きな揺れであったが、数分するうちに揺れは収まった。
30分ほど避難所に待機した後、避難解除となった。
やれやれである。

デスクに戻ると、パソコンモニターや書類が散乱している。
皆で、落ちた仕事用具を元の位置に戻す作業をおこなった。
結局、仕事ができる状態まで復旧するのに、2時間を要した。

一段落つくと達也はコーヒーが飲みたくなった。
ひっくり返ったコーヒーメーカーを元に戻し、
動作するかどうか、コーヒーを作ってみた。
やってみるとコーヒーメーカーは、うまく動作しているようだ。
達也がコーヒーの香りに安堵し、コーヒーをすする。
程なくして大山が近づいてきた。

「やれやれだな。」
達也は言った。
「ところで、あの骨董屋は大丈夫かな。」
大山は言った。
達也も気になっていたところである。
コーヒーを飲み終わると、
大山と地骨董屋を見に行くことにした。

骨董屋に着くと、最近まで閉まっていたシャッターが開いている。
扉を開け、中をのぞいてみる
しんと静まりかえった中、誰もいないようである。
薄暗い店の中に入っていく。

上板が一枚板の分厚い机があった。
机の下には籐のかご、本が散乱している。
地震で机から落ちたのだろう。

ふと見ると、写真立てが机の下に落ちている。
壮大な山々と山岳小屋を背景に男性3人、女性2人の写真。
その写真の人物に見覚えがある。
中央の背の高い男である。